花まる83 WEF技術開発株式会社(大津市)

2025/9/29 毎日新聞

 琵琶湖の周りに住む私たちは、日々の湖面の色の変化に目を留め、自ずと母なる湖への愛情を育み、環境意識を高めているのかもしれません。WEF技術開発の青山章社長も、滋賀の自然をこよなく慈しむひとり。県環境保全協会のワークショップを機に、琵琶湖に繁茂する水草の堆肥化に有効な「活性酸素」の探求を続け、国内外にその実用化を広げています

 1976年に起ち上げた産業用設備の洗浄を手掛けるアオヤマエコシステム(大津市)で、顧客から廃棄物のリサイクルや水処理問題の解決を求められ、2016年に第2創業したWEF技術開発。水(Water)、エネルギー(Energy)、食料(Food)の地産地消技術による分散型持続可能地域の構築を目指しています。

 限りある資源を生かす循環型社会の切り札として着目したのが、有機物の原子結合を瞬時に分解する「活性酸素処理」。大気中の酸素から低温、低圧、低コストで多量の活性酸素を生成する世界隋一の特許技術を開発し、これによる廃棄物・排水処理装置を製品化しました。主要な処理装置は3種。「α-Gaia」は常温で動植物の強固な細胞膜を分解し、余剰汚泥、雑草、野菜残渣、鶏糞、豚糞などを堆肥化。「Polaris」は加熱で原子結合を緩め、不燃断熱材、医療廃棄物などの有機物を消滅処理。「W-Gaia」はオゾンを少量混合し、高濃度・難分解性有機物、工場排水、油分、PFASなどを完全に酸化分解します。

 特に、30年までのSDGs目標達成が難しい大手企業や、自動車の塗装廃水処理を自社で完結したい企業などから引き合いが多いとのこと。今年新たに、廃棄物のもみ殻から、活性酸素でセルロースを分解除去し、生成したバイオ炭と非結晶シリカを農業や脱炭素に生かす取り組みも、大学、農業法人と開始。外務省「脱炭素技術海外展開イニシアティブ」によるビクトリア湖(アフリカ)で増殖するホテイアオイの飼料・エネルギー化や、環境省「アジア水環境改善モデル事業」によるベトナムの繊維染色産業の水質改善、ハイフォン市(ベトナム)の浄水場での原水処理活用など、海外需要も年々増加しています。

 さらにもう一つの特許技術は、水中でエネルギーを使わずに金属イオンを溶出し、電池効果で不純物を凝集する「TERRAST処理」。特殊な炭とアルミニウムを固着させたTERRASTが、他の凝集剤では難しいフッ素、アンチモン、ヒ素なども処理します。日本国際協力機構「中国科学技術部日中連携事業」で湖南大学(中国)とタリウムの効果的除去技術の開発を進め、8月に開催されたアフリカ開発会議(TICAD)や万博でもその技術力が紹介されました。

 「この二つの特許技術で、すべての水処理問題が解決する」と胸を張る社長。アオヤマエコシステムでの数々の現場の難題に応えるべく、文系出身ながら根気強く研究を重ね、磨き上げた開発力には感服します。当初、産業支援プラザの事業可能性評価でAランクを受けたノウハウは、「滋賀県近未来技術」としてパワーアップし、多くの顧客を驚嘆させています。

 今後は、エンジンの効率アップや排ガスの浄化にも貢献したい。経済産業省「ミカタプロジェクト(自動車産業に関わる中堅・中小企業者の事業転換等を支援する事業)」からも声掛けがありました。また食品の鮮度保持を延ばす活性酸素は、フードロス削減にもつながります。「あっと驚かすことをやりたい」と邁進してきたベンチャー魂は、さらなる可能性に向かい、エコシステムを加速しそうです。

企業概要

WEF技術開発株式会社

大津市堂1-19-15

水・エネルギー・食料の地産地消技術開発、水処理設備設計施工・メンテナンス、河川・池浄化再生、脱水余剰汚泥削減・リサイクル、有機廃棄物(生ゴミ・水草・トウモロコシ茎等農業残渣)減容処理・リサイクル、メタン処理・発電設計施工、農業残渣のバイオエタノールリサイクル。
電話:077-549-8015
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(公財)滋賀県産業支援プラザ 
情報企画課

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077-511-1411

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