【毎日新聞】「松山産業株式会社」を紹介する記事が掲載されました
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花まる82 松山産業株式会社(甲賀市)
2025/9/12 毎日新聞

日本で化学繊維産業が急速に発展し、用途開発が盛んに進められた1960年代。建築用養生シートの製造から始め、時代の要請に沿いながらこつこつと歩み続けて、今、テント倉庫業界でトップシェアを誇る松山産業の魅力に触れました。
農林業が主ななりわいだった土山で、雪の多い冬場に地域の若い女性たちの協力を得て、軽量なシートの縫製事業を開始した初代。好景気に乗り、国鉄貨車シート、トラック用ボディカバーなどの需要が広がる一方で、住宅の建設ブームを受けて軽量のアルミサッシ加工にも着手しました。その後、産業分野からのニーズが高まり、建築、電気工事、溶接事業まで自社で手掛けるテント建築物メーカーに。工場用大型テントハウス、高速キャンバスシャッター、開閉式コンテナ蓋など、オリジナル製品を次々と生みました。

ターニングポイントは松山健一郎現社長の就任直後。2007年の建築基準法の改正を機に、将来を見据え、厳格な建築確認申請を必要とするテント倉庫の製造への舵切りを決断しました。社長も従業員も共に勉強を重ね、県下唯一の“構造計算ができるテント企業”に。意匠、構造設計から施工までを一貫し、企業の工場設備やVE(品質を維持しながらコストを削減する手法)などに幅広く対応できる全国規模の企業に進展したのです。東日本大震災後は、がれき処理施設を委託されて復興を支援。軽量鉄骨部材を組み合わせるラチス構造なども、今や得意とするところ。県プロフェッショナル人材戦略拠点を通じ、ソフトウェア開発人材も活躍しています。

社長何よりの自慢は「従業員」。毎年恒例の焼肉大会では、全従業員が自ら事前にシートの端材を食堂の床に敷き、家にある野菜などを持ち寄り、終了後は一斉に清掃、翌日が休業日でも換気のために出社する人もいるとのこと。創業以来、先輩から何も言わずとも受け継がれてきた社風が、経営理念やビジョンを越え、チームワークを醸成しています。子どもや高齢者を抱える家庭の事情、地域行事、農業などの家業も互いに理解し、言外に礼を尽くす家族のようないたわりが、顧客を大切にする気持ちにつながっているのでしょう。
「顧客の課題解決のために、ひたすら“泥縄式”で進んできた」と語る社長。目の前の困りごとに真正面から挑み、新しい可能性を切り拓くことで企業の成長につなげてきました。柔軟性を要する“泥縄式”は、業界の変化の多いビジネス環境に適合したのかもしれません。多くの専門性の高い人材を育成し、一気通貫を可能とした独自の事業構造は、大きな強みとなっています。

近年、テント倉庫で培ったノウハウを生かした鋼板製テント「プレハウス」が、好評を博しています。従来以上の耐久性、防犯性、防火性、低コスト、短納期を実現し、美しい外観も特長。大手自動車部品メーカーが一般の工場に置き換えるなど、新たなニーズやさまざまな用途が生まれています。内部にホイストクレーンを備えた「クレーン付きテント」と並ぶ人気商品となりそうです。
地域に根差しながら技術・技能、労働力などの経営資源を生かし、需要に応えていく松山産業。頻発する災害時に命を守るシート製品や、万博のパビリオンを覆う多彩な膜材などが見せるテントの無限の可能性を、同社は今後さらに開花させるでしょう。
企業概要
松山産業株式会社
甲賀市土山町北土山1700
テント倉庫、上屋テント(テント屋根)など多種多様な用途に対応したシート製品の設計開発、販売、施工、設置、メンテナンスなどのトータルサポート。
電話:0748-66-1161
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お問い合わせ先
(公財)滋賀県産業支援プラザ
情報企画課
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- 077-511-1411