株式会社長浜シャーリング工場

2024/4/24 毎日新聞(滋賀版)

近年、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が急速に進む中、独立行政法人情報処理推進機構の「DX白書2023」によると、日本の企業は規模が小さくなるほどDXへの取り組みも少なく、従業員100人以下の中小企業では3割強が「取り組む予定はない」と回答しています。そのような状況下、外部と連携してプロジェクトを立ち上げ、自社の状況に即したDXへの取り組みを始動した長浜シャーリング工場を紹介します。

初代は1964年、金属板を直線状に切断する機械「シャーリングマシン」1台から事業を始めました。78年に法人となり、さまざまな鋼材の曲げ、穴あけ、溶接、塗装、組立と幅を広げ、材料の調達から完成までを社内で一貫できるようになりました。リードタイムの短縮による短納期対応、毎月の品質会議による徹底した品質管理を強みとし、グローバル企業を主な顧客に、一次下請けとして長年の厚い信頼を得ている企業です。設立とほぼ同時に開設した三菱樹脂出張所(現三菱出張所)は、先方の敷地内にあり、自前の保有機械で製造工程の一部を請け負っています。また、ある大手取引先からは部品の共同製造許可を受けており、技術力と品質への信用度の高さが伺えます。現在は、顧客の要望に合わせた製缶加工が主力で、あらゆる金属素材のオーダーメイド品の製造を可能としています。

DX化に踏み切ったきっかけは、今から1年ほど前、取引先からの受注増加による納期遅延の発生でした。原因は、慣例化していた属人的な生産管理体制。これまでの好業績は従業員の人手が頼りでしたが、働き方改革やコロナ禍で調整が追い付かず、退職者が続出しました。何から手をつけるべきか悩んでいたところ、県プロフェッショナル人材戦略拠点が、本来の「人材戦略」に加え「経営戦略」も融合した課題解決のためのDX化を提案。支援を受けながら、根本的な改革を目指そうと決断したのです。

まずは、県内のシステム開発企業、データサイエンス企業、金融機関とプロジェクトチームを結成。第1フェーズとしてビジネスインテリジェンスツールを導入し、AI、バーコードリーダー、IT専門家などを活用した生産管理システムの構築、工場の稼働状況の見える化、生産現場の改善、職務分掌の明確化など、属人的対応から組織的対応へと移行しました。生産管理責任者も採用し、無事にシステム完成。第2フェーズの運用開始は目前です。創立50年を迎える4年後には、目標である「機械で担えるものは機械で、人は人にしかできない業務を」が実現し、人的資本を生かした持続的な成長が想像できるという、実感があると言います。

「今後は、大切な顧客からの揺るぎない信頼のもと、その方針に追随しながら、さらに一歩先を見据えた積極的な提案で支えることができる」と笑顔で語る林一孝社長。伸長が見込まれるステンレス加工にも意欲をのぞかせています。DX化は中小企業にこそ重要な戦略で、自社の実施体制が十分でなくても他機関との共同や人材活用により成果を出すことが可能です。タイムリーかつスピーディーな英断で未来を拓く長浜シャーリング工場。DX推進の好例として、県内の中小企業に勇気と活気を与え先導してくれそうです。

企業概要

株式会社長浜シャーリング工場

(長浜市西上坂町310-1)

http://www.nagasya.co.jp/

レーザー切断、曲げ加工、穴あけ加工、マシニング加工、製缶加工、塗装、組立、薄板大量スリッター加工。

お問い合わせ先

(公財)滋賀県産業支援プラザ 
情報企画課

TEL
077-511-1411

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