有限会社大與

2023/9/5 毎日新聞(滋賀版)

櫨(はぜ)の実や米糠(ぬか)などの自然素材の蝋(ろう)を、灯芯の周りに年輪状に塗り重ねた和ろうそく。その炎は、まるで生きもののようにゆらぎ、神秘的で、飽きることなく見続けるうちに心が安らぎ、生命力を高めてくれるような包容力があります。国内に10件ほどしかない専門店、滋賀県では唯一となる有限会社大與(だいよ)を訪ねました。

1914年、大西與一郎氏が丁稚奉公の後、故郷の今津で開業。社名も初代の名前に由来します。大本山永平寺のご用達となり、84年には県の伝統工芸品に認定されました。こだわりの一つは「素材」。国内産、植物性100%を条件とし、櫨蝋や米糠蝋を使います。櫨を採取できる業者は全国でも数軒。希少な原料で、石油を精製したパラフィンなどを原料とする洋ろうそくに比べ、匂いがなく煤(すす)や煙が出ません。炎はふっくらと大きく、柔らかな光を放ちます。また、和紙に灯芯草の髄を巻いて作る芯は、太さや巻き加減で蝋を吸い上げる時間を調節でき、蝋が垂れにくいのも特長です。もう一つのこだわりは「手掛け」。40度程度で溶かした蝋を素手で繰り返し塗っては乾かす、根気を必要とする手仕事で、蝋の融点や凝固点、収縮率を、作業時の気温や湿度に合わせ肌感覚で調整する職人技といえます。

4代目の大西巧社長は、就職活動中に初めて聞いた3代目である父の話が一番面白かったと、家業を継ぐことを決意。仏事や神事などの需要が減りつつある中でも、安価な材料や大量生産に流されず「高価でも良質な材料で手間をかけたものづくり」を貫き通した父の背中に、和ろうそくの秘めた可能性を直感したのでした。

2011年、自らプロデュースし、廃棄される米糠から抽出した蝋で作った「お米のろうそく」が、グッドデザイン賞中小企業庁長官賞を受賞。自然との共存というメッセージが共感を呼んだのです。その後も、ライフスタイルの変化や環境意識の高まりを敏感に察知し、顧客の心を掴むアイディアと実行力で「身近で生活に寄り添う和ろうそく」を次々と展開しています。近年、海外市場にも進出。日常の食卓やティータイム、お酒を飲みながら、またバスルームやヨガなどでろうそくをともす文化の根付く欧米で、匂いも蝋垂れもなく環境に優しい和ろうそくは大好評です。当プラザの令和5年度中小企業等外国出願支援事業補助金への採択を受け、さらなる拍車が掛かります。

ろうそくは、人類の営みの源である火を扱うために考え出された発明品です。暗闇を照らし、暖を取り、身を守り、祈り、古からあらゆる場面で人は明かりに支えられてきました。「時代を生きる人々がいとおしむ和ろうそくを作りたい」と語る大西社長は、和ろうそくを介し、心のゆとり、持続可能な未来、あるべき社会を実現しようと試みています。これこそが真の伝統工芸なのかもしれません。大與の和ろうそくはその小さな炎で、私たちが進むべき100年先への道筋を照らしてくれています。

企業概要

有限会社大與

(高島市今津町住吉2-5-8)

https://warousokudaiyo.com/

和ろうそく専門店。

お問い合わせ先

(公財)滋賀県産業支援プラザ 
情報企画課

TEL
077-511-1411

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