うちでのこづち67号
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   いくつもの失敗を   チャンスに―― これまでの歩みをお聞かせください実は私は化学や環境問題とは畑違いの出身なんです。23歳まで国鉄に勤務していましたが、好きだった絵で身を立てたいと岡山から京都に出てきました。塗料や絵の具を扱う問屋に3年勤めたあと、1970年に大津市瀬田で中古のプレハブ小屋を自分で建て、起業したのが始まりです。合成樹脂を使った文化財の修復や仏像のレプリカ制作が主な仕事で、いまも社名に“工藝”の文字があるのはそのためです。独立したものの、造形物制作は手間のわりに利益が薄く食べるのがやっと。そこで考案したのが「クリスタルアートパネル」です。絵画などの印刷物の表面を樹脂でコーティングするというもので、当社の特許第一号となりました。―― その後どのような事業展開を?アートパネルが人気を呼び、百貨店などを通して全国展開されるなか、あるときパネルに絵を圧着させる作業中、誤って汚れ防止に敷いていたナイロンシートの方に絵がくっついてしまったんです。それを見て、私は屋外の壁面や道路などへ絵を転写できるのではないかと思いつきました。常温転写技術「トランスアート」として商品化すると話題を呼び、全国を飛び回って壁や道路に絵を転写するようになりましたが、とても手が回らなくなり、材料とノウハウを提供するフランチャイズ制にしました。ところが、加盟業者の手違いなどで発生するクレームなどを見込んでいなかったため、赤字を抱えることに。しかも大規模な転写では樹脂やフィルムの廃棄物が大量に出て、その処理も頭痛の種でした。はじめは野焼きしていましたが消防から指導を受けてしまい、困り果てて県に相談したところ紹介されたのが、機能性高分子による新素材開発で先駆的な研究をされていた龍谷大学の竹本喜一先生。「プラスチックなどの合成物も炭化すれば安全な自然物になる」と聞き、処理方法とその過程で生まれる活性炭の用途について共同研究することになります。遡ること20年前の偶然の失敗と幸運な出会いが、現在の炭素応用事業につながっていったわけです。   開発スピリットを   軸に―― 廃プラからつくる活性炭の特徴は?我々が開発した「廃プラ減溶炉システム」では、8割をガスとして再利用でき、残り2割は活性炭になります。当社の炉で廃プラを水蒸気で賦活(活性)させると、ヤシガラと同等の吸着機能をもつ活性炭になり、エアコンのフィルターや消臭剤、水質浄化剤などに利用できます。不純物を多く含む廃プラでも、炭化すれば融雪材や壁などの建材、土壌改良材として用いることができ、順次、商品化しています。―― 自動車業界にも進出されましたねPET100%の廃プラをアルカリ賦活※し、単位質量あたりの表面積が最大3600㎡/gの活性炭(ヤシガラは最大2000㎡/g)を製造することに成功しました。表面積が広いため多くの電気を蓄えることができ、その特性を生かして電気自動車の急速充放電キャパシタ素材を開発、2015年にはサポイン事業※にも採択されました。廃プラを無酸素還元で炭化すればCO2も出ず、リサイクル時の環境負荷も小さくてすみます。電気自動車へ部品供給できるようになれば、環境問題へのアプローチをさらに大きく広げることができるでしょう。―― 今後の展望をおきかせください。自社開発した高効率焼却炉や、冷暖房効率を高める壁クロスなどで打って出ようと考えています。商品は10年くらいの周期で波がくるので、順調なときこそ次に備えて開発を進める必要があります。活性炭や炭素を扱う企業はたくさんありますが、多孔質活性炭と高密度炭素は機能も使われる業界もまったく異なるため、両方のノウハウをもつ企業はほとんどなく、当社の優位点になっています。これまで、その強みを活かして大学と共同研究を進め、積極的に特許を取得してきました。直近では廃プラから超高密度炭素をつくる製法で国際特許を取得することができました。現在も7つの大学と別々のテーマで共同研究を進めています。開発費が嵩んで大変ですが、やるしかないと思っています。販路開拓にも力を入れており、しが新産業創造ネットワーク※の会員になって、今年の10月に大阪で開催された関西機械要素技術展にも出展しました。リスクはつきものですが、アイディアをカタチにして商品化するのはなんといっても面白いものです。思いついたらすぐ行動することをモットーに、スピード感と勢いをもってこれからも事業を展開していきたいと考えています。問い合わせ先(公財)滋賀県産業支援プラザ連携推進部 ものづくり支援課       077-511-1414   077-511-1418   shin@shigaplaza.or.jp 07洗顔料のスクラブ(微粒子)などに使用されているプラスチック製マイクロビーズに替わる、環境にやさしい素材として開発した球状活性炭約20年前に開発した常温転写技術「トランスアート」

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