企業が海外で事業展開を進める上で、知的財産権の取得は技術力やブランドの裏付けとなり有益です。商標を生かし、滋賀の良さをユニークな製品にして積極的に海外に発信している寝装品製造・販売のウエスティ工業を紹介します。
1946年、同社は古くから寝装品の縫製が盛んな愛荘町で創業しました。近年、売り上げが減少傾向になり、事業を立て直そうと抜擢されたのが4代目の西村真理取締役社長です。
女性の感性、母、主婦、消費者の目線で開発したアイディア製品「ぐるっと楽々ふとんカバー」はキッズデザイン賞を受賞。子どもやお年寄りも簡単に着脱できるよう、ファスナーをU字型にしたり、布団とカバーを簡単に留められるワンタッチ式ホックテープを採用したりと工夫を凝らしました。これに目を留めた台湾の企業からの引き合いをきっかけに、当支援プラザの支援を得て初めて海外で社名商標を権利化。その後、近畿経済産業局のプロジェクトによるパリ出展や香港進出など、海外販路拡大に挑み始めたのです。
ジェトロが開催するニューヨークでの人材育成塾にも参加し、ブランディングを学んだ西村社長は、「心と身体を癒し、夢をかなえる明日へ」とのコンセプトを掲げ、「ウエスティ品質7つのこだわり」を定めて品揃えを増やしています。
そのひとつ「和晒(わざらし)二重ガーゼ」は、和晒窯で数日間、綿の不純物を取り除いているため生地の繊維が壊れず、柔らかくて吸湿性、保温性に優れています。また「ののすてクッションカバー」は、かつて愛荘町の近江上布の機屋(はたや)、野々捨商店が使っていた型紙の模様を綿生地にプリントし、現代の色使いでよみがえらせた、古き良きものと新しさの融合です。
他にも「琵琶の葦(よし)布」や「浜ちりめん」など、滋賀の素材で次々と新製品を生み出しています。顧客ニーズに柔軟に対応できること、そして細部の縫製をベテラン職人が動力ミシンで一枚一枚仕上げる熟練の技は、同社が世界に誇るきめ細やかな心遣いです。
「繊維も経営も知らなかった」と謙虚な西村社長ですが、着実に業績は伸びています。「眠りは大事。皆が人生をポジティブに生きていけるようにお手伝いしたい」と熱く思いを語り、明るく風通しの良い社風も社長が醸し出しているようです。滋賀の伝統文化やクオリティを時流に沿った形にし、多くの国に広めたいという志をかなえるべく、当支援プラザは知的財産を含めサポートを続けます。
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