捨てられるはずの廃棄物に新たな価値を持たせて生まれ変わらせる「アップサイクル」。リサイクルのように原料に戻すためのエネルギーを使わず素材をそのまま生かすため、地球に優しいと言われています。リユースとも違い、別物として寿命を延ばせる可能性がありサステイナブルです。アップサイクリングで生まれた製品が、思いもよらず話題を集めている伸和株式会社を紹介します。
創業から60年、鮮やかに仕上がる独自の染色加工技術を磨き続けている同社は、縮小傾向にある業界の中で早くから「染色」と「起毛」の自社一貫加工体制を構築し、ライフスタイルの変化に伴いながら必要とされる商品を提供してきました。得意とする伸縮性素材の起毛商品(ストレッチB面)では世界シェアの約7割を誇りサポーターやウエットスーツに使われています。
主力の布製面ファスナー「マジクロス」のハードタイプは、研磨機、自動車内装材の固定、結束帯、寝具、トンネル工事資材、人工芝グラウンド敷設工事資材、人工芝用ラインテープなど用途は多様。我々の見えないところで強みの接合強度が生きています。大手海外企業からも引き合いがあるほどのオンリーワン技術で、品質重視で得た信用力とも相まって、さらなる可能性がありそうです。
そんな作業工程で発生する大量の生地の切れ端を、有効活用できないかと考えた末、生まれたのが「ひも子」です。ジャンバーの裏地や毛布の縁、ウエットスーツなど材質も色も様々なひも状の端材を、毛糸玉のように丸めて農協や駅前案内所に並べたところ、あっという間に完売。今井貢代表取締役によるネーミングやメッセージも共感を呼び、今やキャラクターのように同社の魅力を発信しています。
広い工場敷地に沿って流れる野洲川。染色は水が命といわれるほど、同社には大切な供給源です。高次の浄化サイクルで鯉が育つほどきれいな水にして還す配慮も怠りません。地域との関わり、環境、そして廃材も大切にする同社から「ひも子」が誕生したのも当然かもしれません。
江戸時代、着古した布を裂いて麻糸と織り上げ「裂織(さきおり)」という織物に生まれ変わらせるアップサイクルは身近だったとのこと。先ごろ経済産業省が出した、繊維製品の資源循環による関連産業の強化の後押しを受け、伸和株式会社のさらなる飛躍が期待されます。
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