中小企業にとって海外進出はリスクを伴い大きな決断と勇気が必要でしょう。しかし世界金融危機後の厳しい状況下、ベトナム進出という果敢な挑戦で難局を乗り越えた、産業機器製造の株式会社キーテックを紹介します。
2000年、エンジニアとして勤務していた機械設備メーカーが倒産した岸場功修さんは、取引先企業の困惑を目の当たりにし何とか応えたいとの思いで、同僚の技術者5人とキーテックを立ち上げ、代表取締役として事業を継ぎました。
当初業績は順調でしたが、リーマンショックを機に売上が激減、リストラを実施せざるを得ないという辛い経験もしました。景気後退の中、大手取引先が海外に生産拠点を移すことを知った岸場社長は、11年、先行してベトナムに工場を建設することを決断したのです。「設立8年目、社員16人の零細企業が海外進出など無謀だったと今は思います。ただ従業員を守るため、お客様のために直感を信じました」と振り返ります。
予測通り、ベトナムには続々と日系メーカーが進出して成長を遂げ、新たな業界の大型受注や取引拡大につなげることができました。
成功の秘訣(ひけつ)は「社員を信用し、任せること」。岸場社長はそう確言します。子会社の有限会社キーテックベトナムは、設立時から日本で研修を終えたベトナム人2人をリーダーに任命。彼らの指導により、部下は製造のみならずプログラミングなどの高い技術を習得し、生産レベルを上げていきました。社員数は今や親会社より多く、家族ぐるみの信頼関係が自慢です。
19年には第二の子会社、株式会社キーテックエンジニアリングを設立。ベトナムでも日本同様の一貫体制を実現しました。近年はベトナムでの新規顧客が日本の親会社との取引につながるなど、国内外2拠点の相乗効果が生まれています。技術力があれば、小規模な企業にとっても海外開拓が新たなビジネスチャンスや成長につながること、日本のものづくりが世界に通じることを、キーテックの軌跡は証しています。
滋賀型・NT(ニッチトップ)企業創出支援事業、省エネ診断支援事業、特許出願支援など当支援プラザの施策を活用し、その技術力を形にしています。積極的な海外展開の成功で信頼を得た同社は、25年、栗東市小野に新工場を建設予定です。蓄積された知恵と技術の集大成が楽しみです。
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