資源やエネルギーは使用するとその品質が下がります。これを廃棄せず、下がったレベルに応じて何度も利用することを、階段状に連なる滝になぞらえ「カスケードリユース」と呼びます。株式会社アプデエナジーは、電気自動車(EV)のバッテリーを劣化の度合いに応じて別の用途で利用するカスケードリユース技術で、限りある資源と環境を将来に守り継ぐために今年創立されました。
代表取締役社長の王本智久さんを中心に創業メンバーは3人。いずれも別の企業を経営する、電気やモーター、自動車整備、IoTなどのスペシャリストです。滋賀や京都などの企業経営者らのグループ「一般社団法人エネルギーと環境を考える会」で意気投合し、それぞれが持つ事業場や人材を生かして、できることから始めようと起業しました。
まず、EVに積まれている使用済みの複数の高品質リチウムイオンバッテリーを回収・検査し、劣化状態に応じて仕分けます。最も劣化率の低いバッテリーは、中古のエンジン車からエンジンを取り除いて置き換え、中古EVに生まれ変わらせます。「コンバートEV」と呼ばれ、同社はすでに7台の販売実績があります。新車でEVを製造するより、安価でCO2排出も少ない「持続可能な」車として注目を集めています。
もう少し劣化が進んだバッテリーは、自動販売機の独立電源に使います。さらに劣化の進み具合に応じて「家庭・オフィスの蓄電システム→ポータブル電池→カメラのバッテリー」と用途を変えていきます。
バッテリーの扱いには危険が伴いますが遠隔監視システムも備え、細かな整備からバッテリーテストまで全てをメンバー自身の手で実施できることが他社にはない強みです。同時に事業を進めている太陽光・小型風力・マイクロ水力による「発電」と、このカスケード形式によるエネルギーのリユース技術を組み合わせれば、電気の自給自足の実現に近づけると同社は考えています。まずはコンバートEV事業をフランチャイズ形式で全国に広めたい。環境に配慮しながらエネルギーを余すことなく活用するこの循環型モデルが、社名の通り日本のエネルギー社会のアップデートにつながればと期待は膨らむばかりです。
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