滋賀県の森林面積は約20万㌶。県土の約半分を占め、琵琶湖の面積の約3倍に及びます。この豊かな森林資源を有効活用し守り育てようと、さまざまな団体、事業者が尽力していますが、そのひとつが「杢と」。県産材の良さを周知しながら、木の特性を生かした幅広い製品のデザイン・設計・施工・販売、イベントなどを行っています。
代表の浅井翔平さんは県内の大学院で建築を学び、地元の木材で家を作りたいと多賀町の設計事務所に就職。県の林業や製材業者の高齢化、後継者不足の実情を目の当たりにしました。状況を変えるためには、ひとつの事業所を守るだけでなく県内の関係団体が団結すべきと「県木材協会」で活動を始め、昨年、杢とを立ち上げました。
浅井さんの「木」を慈しむ優しさは随所に表れています。例えば、流通せずに役割を終えた廃材も製品にします。また販売の際は、お客さんが自然の木と製品の双方に触れることで、「樹木」が「木材」さらに「木製品」になることを実感してもらいます。
杢との製品の特徴は、余白を残しているところ。購入者が好みの色や形に変えることもでき、作る喜びを一緒に楽しんでほしいと願っています。木育講座やワークショップでは、木への親しみや理解を深め、自然素材の価値や利用の意義を学ぶことで多くの県民に山の保全や県産材(びわこ材)の地産地消に関心をもってもらおうと努めています。
先ごろ大津市の福祉事業所「れもん会社」と共同で、山のおすそわけ「moppen(モッペン)」という積み木を制作しました。県産のスギ、ヒノキ、クリ、ナラ、サクラなどのでこぼこの木材を、無塗装のまま全て違う形に仕上げています。名の由来は、関西の方言「もっぺん」。「もう一度」「もう一回」という意味で、廃棄されそうな木に命を吹き込みたいという温かさが伝わってきます。
村を挙げた森林再生の取り組みで知られる岡山県西粟倉村の「百年の森林構想」のように、未来の滋賀をびわこ材で元気にしたい。今、県産材を内装(床、壁などの室内装飾)に使う試作に挑んでいます。
このコーナーで紹介したイヴケア、青花製彩、そして杢と。滋賀の若い起業家の活躍が楽しみです。
TEL:077-511-1411
E-mail:jouhou@shigaplaza.or.jp