7月の3連休の早朝、草津市のアオバナ畑で夢中になって袋一杯に青い花を摘み取る子供たちを見つけました。特定非営利活動法人青花製彩(あおばなせいさい)が営む畑に集まった、延べ約100名の地域のボランティアです。
草津市の市花、アオバナ(学術名:オオボウシバナ)をご存知でしょうか。古く江戸時代から全国でも草津地域周辺だけで栽培され、日本の伝統産業である友禅の下絵書きの染料として全盛を極めましたが、着物需要の減少や化学染料の台頭により生産は減少。アオバナ畑はほとんど姿を消し、現存の農家はわずか2軒となってしまったそうです。
この貴重な文化資源を後世に残したいと立ち上がったのが峯松孝好さん。6年前、後継のない実態を知り、種をもらって育てるうちにその魅力にひかれ、黄綬褒章を受章したアオバナ農家に弟子入りして栽培のノウハウや青花紙の製造方法を習得しました。
しかし大きな課題が二つ。一つ目は花汁を約80回塗り重ねる従来の青花紙作りの重労働。これは県工業技術総合センターと大津市の洛東化成工業株式会社との試行錯誤の共同研究により、アオバナ色素の粉末化、フリーズドライ製法の成功で解決することができました。
二つ目の課題は時流に合う新たな需要の創出。これはあおばなの優れた特性の発見が起点となり、長い年月を経ても色褪せず透明度が高いコンメリニン(青色色素)を生かしたアクセサリーや、湖南農業高校との共同研究により食品の添加にも利用できるよう殺菌を行った色素粉末の商品化などにつなげることができました。
地元有志により生まれた草津青花紙製造技術保存会とも協力し、ワークショップやイベントの開催でアオバナの文化の保存や啓発活動も行っています。伝統と革新を両立させながら、人の手によって育てられてきたアオバナは「地域の宝物」として滋賀、草津の新たな産業に生まれ変わりそうです。
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