海のない滋賀県で電子関係製造企業がエビの養殖に挑戦? その理由を知りたくて、ワボウ電子株式会社と、事業を手掛けるワボウ産業株式会社を訪れました。
ワボウ電子は創業81年。時流の変化に即しながら、紡績、半導体製造、プリント基板実装、ソーラー発電と、常に「社会の役に立つ」事業に挑んできた企業です。
子会社のワボウ産業は、独自技術を活かしたシステムで閉鎖循環型の養殖槽を設置。伊吹山の地下50㍍から湧き出す地下水に、ミネラル豊富で汚染のないフランス産岩塩を溶かし、タイから輸入した稚エビを、徹底した温度管理の下、抗生物質等の薬品を投与せずに丁寧に育てます。水槽の水を立体的に大きく循環させて自然同様の揺れを再現し、高濃度酸素を注入し、海老の活発な運動を促進することで身が引き締まり、旨味・甘みの強い特徴を持つ「おうみ海老」が生まれます。
独創的なのは、海ぶどうとアオサの複合養殖。これらの植物は、エビ養殖で出た窒素分を吸収し、排出した酸素をエビの養殖槽に供給する、サスティナブルな天然の濾過装置の役割を果たすのです。
当初の疑問は、代表取締役社長の月ケ瀬義雄さんのお話を伺い、解けました。「ワボウには技術力を生かして常に初めてのことに挑戦する歴史がある。地域の恵みを最大限に生かし、県内でも初めての取り組みによってお客様に喜んでいただけることが嬉しいですね」。設計から現場まで全て自社運営できるのが同社の強み。モノづくりで培った高い技術力と豊富な経験に基づいた、新たな「食」への貢献です。
今後、安定した生産技術や完全養殖(稚エビの自社生産)を目指し、さらなる試行錯誤が続きます。早くも東京都内の百貨店やフードフェアで、環境にも優しいと好評を博している「おうみ海老」。同社の熱い心がギュッと込められた、味わい深い近江自慢の一品です。
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