SHOPええみせ@ナビ浜ぐら
20余年前、近江八幡の歴史的遺構である八幡堀の景観にはなくてはならないものと考え、近江商人の妻たち五人が立ち上がり、朽ちかけていた浜の蔵を残したい一念で修復に取り組みました。女性ならではの発想で会社を起こし、まちづくりの拠点「浜ぐら」に吹き込んだ経営のマニフェストをご紹介します。
マニフェストその1
ええこと
店内
黒い柱と白壁のコントラストが美しい。
250年前の梁を往時のまま残し
歴史的遺構を現代に甦らせる 


 八幡堀はかつて、琵琶湖を往来する荷船の寄港地で、江戸時代には船荷の倉庫として多くの土蔵が建ち並んでいました。八幡堀の保存運動に関わる女性五人が、20余年前朽ちる寸前の古い土蔵の保存修復に取り組みました。吹き抜けの黒漆の太い梁や障子から差し込む光は日本人の感性の原点であり、若い世代にも人気の高いお洒落な設計です。「景観を壊さないため、大きな看板を出さないというのもこだわりです」。入り口に「浜ぐら」と書いてあるだけの小さな看板で、最初はどこから入るのかわからないと怒られたことも。女性グループが古い蔵を再生させたことで話題を呼び、口コミで全国からお客さんが訪れるようになりました。今も堀に沿って土蔵群や荷下ろしに使った石段が残り、堀端に八幡堀遊歩道も整備され、人が水辺と親しみやすい景観と調和した休憩処です。


マニフェストその2
ええもん
あぶり串
おやつ感覚でどうぞ
「あぶり串5種」
ケーキセット
手作りケーキセット
(抹茶ムース)700円

近江八幡を味わう美味食彩と
町を愛する真心のおもてなし


茶寮浜ぐらのオススメは、赤こんにゃくの田楽や丁子麩の辛し和え・季節のかやくご飯など郷土の味を盛り込んだ「浜ぐら弁当1380円」や、鶏肉やコイモ・アツアゲ等を串焼きにした「あぶり串740円」などオリジナリティいっぱい。明治時代のレトロを再現した「浜ぐら風牛鍋(地酒付)2500円」も人気の逸品です。落ち着いた雰囲気で、土の器や野の花など細部に気が配られ、時が経つのを忘れてお茶するには最高です。お店を切り盛りするのは、八幡堀界隈に住む女性達で、温かなもてなしが人気を支えます。「お客様に『ええとこに住んではりますね』と言われると本当に嬉しくて」。ごく普通の景色なのに、多くの人が訪れ、感動して帰ってもらえる、それがそこで生活し、店を愛するスタッフの誇りです。

マニフェストその3
ええひと
西村さんと山本さん
八幡堀を守る会の
西村恵美子さん(左)
山本俊恵さん(右)

八幡堀保全活動を原点にして
水環境や景観保全を見直したい


開店以来、女性五人で八幡堀保存活動を続けるなか、琵琶湖から八幡堀全体の水環境を考えようと、1988年に「八幡堀を守る会」を発足(会員300人/事務局浜ぐら内)。現在、共同経営者で、守る会の事務局を担っているのが西村恵美子さん(酒游舘)と山本俊恵さん(カネ吉)、山本有子さん(たねや)です。毎月1回、清掃奉仕や空き缶拾い、花ショウブ等を守り育てる活動、飛石設置1人1個運動などの景観保全活動を行っています。また、水の大切さを訴えるために、親子対象にリリース禁止の釣り大会やカヌー教室を開くほか、他府県の中高大生の体験学習を受け入れています。今では、コミュニティビジネスの先駆けとして、自然との共生を目指すまちづくりのシンボル的役割を果たしながら、世代を超え、地域を越えて、人づくりの輪が広がっています。

マニフェストその4
SHOPええサービス
八幡堀
水緑都市モデル事業で石垣は修景された。
白壁の蔵や商家の保存を通じて
歴史と生活文化が息づくまちに


 春には桜が美しい八幡堀は、時代劇のロケ地にもなるほど風情のある場所です。浜ぐら周辺は近江商人発祥の地で、碁盤の目のように区割りされ白壁の蔵や瓦屋根の商家が立ち並びます。「町並みは連なってこそ価値があり、抜けると美しさは半減してしまう」と粘り強い保存運動を展開し、1991年に浜ぐらなど新町通・永原町の商家が県内で初めて、国の重要伝統的建造物群保存地区(※)に選定され、江戸期の佇まいを保存していくことが約束されたのです。八幡堀沿いの蔵も白壁へと生まれ変わり、五人の女性が夢見たまちづくり運動の“火”は20年余の活動を経て燃え続けています。さらに、観光目的やただ保存するだけでなく、現代感覚を取り入れたまちづくりと、まちに息づく歴史的価値や生活文化を次世代へ継承する挑戦もはじまっています。
茶寮 浜ぐら
地図 ●滋賀県近江八幡市大杉町24
●TEL.0748-32-5533
●営業時間:10:00〜17:00
●金曜休み(祝日の場合は営業)
●交通アクセス:JR琵琶湖線近江八幡駅から近江鉄道バス長命寺行きで7分・大杉町八幡山ロープウェイ口下車徒歩3分
●駐車場:あり
西川甚五郎邸
▲近江商人・西川甚五郎邸
かつて、浜の蔵を所有していた西川家二代目甚五郎(1582〜1675)は、八幡蚊帳の特色とされる萌黄蚊帳を創案した人物で、西川産業(西川ローズふとん)の祖です。浜ぐらのすぐ表通りに面して邸宅が残されています。その邸宅の内部は非公開ですが、通りから見る外観に往時を偲ぶことができます。
入り口
伝統的景観を守るため看板は小さめ。
中2階
中二階の和室でほっこりする。
物産コーナー
酒槽を利用した台の上に展示されている手作り商品や物産のコーナー。
八幡山
浜ぐらの前から八幡山を望む。
おだやかに水を湛える八幡堀を襲った存亡の危機!? 
広報誌
▲八幡堀を守る会の広報紙「八幡堀」

1585年の八幡城築城以来、全長4kmの運河・八幡堀は町が栄える原動力として一大動脈の役割を果たしてきました。戦後の陸上交通の発達で廃れ、水が汚染されたため、1965年、埋め立てによる駐車場利用計画が浮上。青年会議所や市民有志が「堀を埋め立てた瞬間から後悔が始まる」を合言葉に、毎週日曜日に清掃を続けた八幡堀保存運動により、1975年埋め立て工事の中止が決定。こうした住民主導のまちづくりの精神は、1988年設立の八幡堀を守る会へと受け継がれたのです。

※文化庁によって選定された重要伝統的建造物群保存地区は全国で62ヶ所です。県下では近江八幡市八幡、大津市坂本、五個荘町金堂の3か所。