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戦後のパン給食導入を機に、昭和26年に地元パンメーカーとして創業。「歩き出したら常連さん」を「つるや」のモットーに、常に地元のお客さんの視点で、「食べるとほっとする、懐かしくなる味」のパン作りに取り組みながら、地域の食の向上に努めている。
有限会社つるや 
代表取締役社長 西村豊和さん(左)
お話しを伺った三代目の西村豊弘さん(右)

 1951年(昭和26年)に祖父がパン屋を始めました。私は3代目になります。祖父は東京の大学で法律の勉強をしていたのですが、終戦後日本の法律が変わってしまったことで、法律家の道を断念します。当時、祖父の実家は郵便局をしていました。戦後、国の直轄になるということで閉めることになり、実家から仕送りをしてもらって、新たに4年間勉強する余裕もなく、食べていくためには何がいいかと悩んでいたときに、教授からのアドバイスがきっかけで、木之本に戻りパン屋を興しました。それは「アメリカには給食制度というのがあり、日本も米ではなくてパンを食べる時代になるから、実家に帰ってパン屋さんをしたらどうか」という教授の一言でした。祖父自身は職人ではないので、経営者として始めました。当初は大手のパン屋の職人さんたちに来て頂き、地元の中学を卒業したばかりの若者にパン作りを指導してもらったと言います。弊社は定年60歳ですが、その当時の創業メンバーの方が定年まで働いて頂いたことが弊社の自慢です。また、父である今の社長も従業員と一緒に寮生活をしていました。従業員と家族同然の関係を築くことで、昔から「明るく、楽しい」職場作りに心がけているのです。現在、従業員の年齢は21歳〜68歳です。こうした職人さんの腕の速さと対応能力は「つるや」の機動力になっています。

 パンの製造業として工場を造ったことは、地元の若者の就職先としてもお役に立てていたのではないかと思います。現在の従業員数は22名ですが、当時から人数は変わっていません。パン工場を立ち上げたと同時に、学校給食が始まったので直ぐに仕事は動き出しました。当時は地元というより、湖北全体にパン屋がなかったため、長浜や浅井町の個人店30店舗ほどにパンを卸していました。今も学校給食用のパンを中心に製造し、湖北の店舗に菓子パンなどを卸すというのは基本的に同じですが、現在は車での買い物中心で、スーパーを利用されるかたが多くなり、個人店というより長浜、高月、木之本、湖北の大型スーパーに卸しています。いずれにしても地元密着型です。自宅のパン屋は昔と変わらず、学校帰りの子どもたちやお年寄りの方が散歩のついでに買いに来るといったお客さんが多いです。しかし、最近はテレビで取りあげられた「サラダパン」が話題になり、県外の方が観光のついでにパンを買いに来られ、ネット注文も増えてきました。
  私は東京でサラリーマンをしていて、5年前に親が体調を崩したことがきっかけで戻ってきたのですが、外から見ると「つるや」のパンがいかに特化した個性的なパンなのかというのが分かってきました。違う視点でパン屋を見ることができたことは、地元に帰って新たなパン作りの糸口になったように思います。

 今でこそ「サラダパン」はテレビ(「県民ショー」等)で取りあげられて話題になっていますが、「サラダパン」ができたのは創業当時(1954年頃)で、50年も前に祖母がアイデアを出して作ったパンです。パン屋を始めた頃は菓子パンばかりで、惣菜パンがなかったため、ちょっと塩気のあるご飯の代わりになるパンをということで、初めはキャベツを使っていましたが、どうしても水が出てしまうので、祖母が家で漬けていた「たくあん」を刻んで入れたのが始まりです。地元の人は幼い頃から食べている思い出の味で、進学や就職で都会に出た地元の人が、帰郷してはお土産にと、この「サラダパン」を持って行ってくれたのです。地元の人が「このパン食べてみ」「変わっている」と広告塔になって、口コミで広まっていったようです。それは、この「サラダパン」に他の商品にはない個性があったからだと思っています。
  創業当時は大手パンメーカーに看板を分けてもらい、メーカーの商品もおいていました。しかし、大型スーパーがどんどん出店してきたことで、メーカーのパンがどこでも買えるものになってしまい、しかも価格的にも「つるや」よりもスーパーの方が安い。こうした社会の流れで、どこにもない、特化した商品というのに価値が出てきたのだと自負しています。

 「サラダパン」の人気は「食べるとほっとする、懐かしくなる味」だとお客さんは言います。今まで気づかなかったこの味を追求していくことが非常に大事なんだということが、「サラダパン」の人気で気がつかされたのです。まずは地元の人が毎日食べても飽きが来ない日常の味になるよう、地元産の個性的なパンづくりをしていこうということで、様々なパン作りに取り組んでいます。  その一つは商工会の特産品開発の一貫で、ブルーベリージャムを使ったパンの開発です。木之本地蔵は目の仏様として有名です。それにあやかりブルーベリーに含まれるアントシアニンが視力回復に効果があるということから、ブルーベリーを地元で栽培してそれをジャムにしてお土産として商品開発し、販売しようということで、「つるや」ではパンとラスクを作りました。
  もう一つは、長浜バイオ大学と長浜インキュベーションセンターに入っているバイオベンチャー企業が産学連携で、湖北産のオオツル発芽大豆を発酵させたパンを開発しており、そのパン作りを「つるや」が共同で開発しています。地産地消で栄養価が高く、商品化を図っていますが、粉がまだ量産されていないので、値段的には高い価格設定になっています。現在は注文販売のみとなっていますが、将来的に製造コストが改善出来れば生産ラインに乗せていきたいと思っています。どちらも地産地消で、地元に信頼して食べて頂ける商品として定着するように現在進行形で取り組んでいます。

 まちの中にある手作りパン屋さんの傾向は、一般的に裸売りの傾向が多い中、「つるや」は袋売りにこだわっています。木之本ではお客さんが頻繁に来ないので、袋に入れた方がおいしさが持続します。それが一番地元に適した方法だと思っています。もう一つ、パン自体をお客さんからよく見てもらうために透明袋にしています。パンは一個ずつ顔が違います。お客さんに選んでいただけることが大事なのです。
  あくまで地元の人に「おいしいね」と言ってもらえるものを目指しています。スーパーに行って売れなかったパンを引き上げてくる時に、昨日のパンを持っているお客さんがいたら、今日のパンと交換します。常においしいパンをお客さんに食べていただく。そうした姿勢で取り組んでいます。そして、一番大切にしたいのは、地元の子どもです。「歩き出したら常連さん」が「つるや」のモットーであるように、この子たちが「つるや」のパンを食べてくれることで、大人になった時に口コミで広がっていきます。地域があって企業があるのです。地域が頑張ってもらわないと「つるや」も発展しないし、「つるや」が頑張ったら地域も活性化していく。地元の人に支えられてきた「つるや」にとっては地元が大事というよりも地元が一番なのです。現在、第二の「サラダパン」も思案中です。しかし、「つるや」のパンのコンセプト、「小さい子どもからお年寄りまで、食べてほっとする、懐かしい味のパンを届けていく」その基本姿勢は忘れないように、地元のパンメーカーとして、これからも地に足のついた経営で地元と共に邁進していきたいと思います。
会社データ

有限会社つるや

代表者/代表取締役社長 西村豊和

本社/滋賀県伊香郡木之本1105番地

   TEL.0749-82-3162 FAX.0749-82-5515
  


設立/昭和26年(1951年)

事業内容/パン・菓子製造販売業

http://tsuruyapan.cart.fc2.com/


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