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油圧用ストップバルブ弁の開発をきっかけに油圧用各種バルブの製作に着手、油圧式ストップバルブの国内需要の80%を占める専門メーカーとして成長。取引先の信頼を得て共同開発など対等な関係を築き、独創性のある技術力で業界をリードする。
廣瀬バルブ工業株式会社 
代表取締役社長 廣瀬一輝さん

 バルブ産業の町として知られる彦根。彦根城下の武具の職人が平和な時代になるにつれ、仏壇のかざり職人へと転身し、その後、明治時代に製糸工場で使われる外国製ボイラーの修理に携わるようになったことが、バルブ産業への参入となりました。バルブの技術を初めて学んだ人が祖父の伯父で、祖父はそこで修行を積み、大正12年に廣瀬鉄工所として、水道弁や鋳鉄弁を製造したのが当社の始まりです。戦後、現在の社名となって「廣瀬バルブ」のブランドを確立してきました。その後、父が事業を引き継ぎ、昭和29年には、それまでメーカーごとに異なっていたバルブの規格を統一して、JIS(日本工業規格)を取得、地場産業として地元に貢献しました。昭和37年、父が油圧用ストップバルブの開発に成功して大手機械メーカーとの取引も始まりました。私は3代目ですが、大学を卒業後、油圧機器関連の企業に就職して、その後、原子力関係の会社に勤務していましたが、多くの貴重な勉強をさせてもらいました。彦根に戻って当社に入ってからは、常に時代の先端を行くモノづくりを心掛けています。

 バルブ(弁)は、パイプ内を流れる液体や気体の量を調節したり流れを遮断するもので、上下水道から化学プラント、船舶、ビルなどの配管に使用されています。当初は水用途が中心の低圧一般バルブを製造していました。水道弁の20倍以上も高い圧力に対しても流れを制御できるという油圧バルブは、昭和30年頃、建設、産業機械などの分野で需要が高まりました。父親である先代社長が開発に成功して大手機械メーカーとの取引が始まりますが、最初は「下請け」としての油圧バルブの生産でした。私が社長に就任して、それまでの水用途の産業用バルブの生産から油圧バルブ事業への全面転換を図り、当社のオリジナル製品をつくりました。材質やバランス機構に工夫を凝らし、油漏れのない、小型で操作のしやすい「軽作動ストップバルブ」です。高い精度が求められ技術開発が難しいものですが、大手メーカーが手がけることが難しいニッチ商品であることから、他社の追従を許さず、この開発によって当社は飛躍しました。現在も、手のひらサイズから大口径のバルブまで、1万を超える種類のバルブを生産しています。

 昭和58年に新商品を担う「製品開発課」を設置して、開発技術者自ら営業に同行して得意先の要望を直接聞くという体制をつくりました。迅速な受注を展開するとともに、得意先と共同開発した製品は当社でも販売できるという合意のもとに、開発費用、特許料も折半するという手法で新製品を開発。得意先と対等の関係を持つことから、「下請け」から脱却し「横請け」という発想を見出しました。これは、同業各社と連携して規格製品を共同開発し、生産を当社が一手に引き受けて他社に供給し、販売は各社が自社ブランドで行うというシステムです。小ロットの製品を集約生産してコストダウンを図ることにもなりましたが、これは自社製品の絶対的な自信と、取引先との信頼関係がないと実現できないことです。共同開発で生まれたものに、バブルの域を超えた製品として「油圧用回転方昇圧器RINT」があります。モーター機能とポンプ機能を融合させた世界初の新しい発想から生まれた昇圧器で、国内のみならず外国の特許も取得しました。コンクリートの粉砕器に標準採用されていますが、油圧回路のコンパクトな設計を可能にし、油圧機器のコストダウンに貢献できるもので、今後、益々需要が高まるものと確信しています。

 「三方よし」は、先人の残した企業のCSR(社会的責任)の理念です。当社ではこれに「労使よし」を加えた「四方よし」を経営信条としています。「作り手」にも良い企業だからこそ良いモノづくりができ、信頼へとつながると思います。「作り手」を重視した社会的責任を果たすことで信用の証と考えています。社会貢献でいえば、環境に配慮した製品の開発はこれからのモノづくりのテーマのひとつですが、滋賀バルブ協会として、産官学共同のプロジェクトチームで、体に有害な鉛を使わない「鉛フリー鋼合金バルブ」を開発しています。もちろん、モノづくりだけでなく、ヒトづくりも大切です。会長を務める滋賀経済産業協会でも若い世代のヒトづくりに力を入れ、経済産業省と文部科学省が連携する工業高校実践教育導入事業を受託し、「クラフトマン21」と称して工業高校の生徒をインターシップとして受け入れ、「作り手」となる若い世代の育成をめざしています。彦根で生まれたバルブという地場産業に目を向けてくれることで、地元での雇用も生まれ地域が活性化されると思います。

  いかに効率よく流体の駆動力を作動させるかという技術が我々の領域です。安全で確実に流体を循環させるかという課題をクリアするために、今、注目しているのが水を使った「アクアドライブ」システムですね。水は使用後の排水処理が不要でリサイクルが可能ですから、環境保全に貢献できることもあり、工作機械、医療、医薬、半導体関連、原子力発電など最先端の分野での応用が期待されています。原油価格の高騰や環境問題、また油圧バルブが熟成産業化しているという状況を思うと、やはり水に戻らないといけないと思うのです。当社が所属する日本フルードパワー工業会には、油圧や電気、空圧など既存の駆動技術と同等のシステムを開発しようと得意分野をもつ企業が全国から参画しています。錆の問題もあり、水というのは難物ですが、かつて水から油に転換してきた当社が、油なみの性能に引き上げる水圧用バルブの実用化に向けて、技術力を試されていると思っています。
 当社は、高圧下でも漏れを許さない精密な製品づくりでコア技術を発展させてきましたが、環境保全など時代のニーズにあった製品の開発には、より独創的な技術力を養っていく必要があります。そのためにも「作り手」にも良い企業として、「四方よし」を経営信条に、これからも邁進して行きたいと思っています。
会社データ

廣瀬バルブ工業株式会社

代表者/代表取締役社長 廣瀬 一輝

本社/〒522‐0082 滋賀県彦根市安清町2番34号

   TEL.0749-23-2020 FAX.0749-23-2027
   

創業/大正12年(1923年)

設立/昭和18年(1943年)

事業内容/油圧式弁類の製造販売

http://www.hirose-valves.co.jp


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