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創業は寛政末期、明治8年に醤油部門を切り離し独立。大量生産の世の中に流されず伝統を頑なに守り機械化もしない経営。お客様の健康を考えた商品作りで、世界でここにしかない醤油を育てる醤油屋を目指す。
丸中醤油株式会社
代表取締役 中居真和さん 


 丸中醤油株式会社の創業は、江戸時代の寛政末期です。もとは造り酒屋だったのが醤油も手がけるようになり、明治8年に醤油部門を切り離し独立させました。その後、戦中・戦後のモノの無い時代には、けっして満足な醤油を作ることができませんでしたが、それでもずっと醸造菌が息をしやすいように水を張ったり桶を埋める努力を続けていたということ、まっとうな醤油を造りたいという大変強い信念をもっていたと聞いています。昭和38年にはようやくほぼ戦前と同じ材料を使った原料での醤油造りを再開しました。
昭和40年には丸中醤油「純正醤油」という名前で出荷しています。そして昭和45年には、農家との契約栽培(無農薬)も開始しました。
  私は幼い頃からすべてが手作業である家業を継ぐのがいやだったので、千葉の醤油メーカーに修行に行きました。ところが、そこの醤油が機械化されあまりにも簡単に製造されているのを見て、手間暇かけて造る自社の醤油造りとのあまりの差に自分の蔵がやっているのは実はすばらしいことだと初めて気づきました。原料からして全く違っています。大手メーカーでは脱脂加工大豆(サラダ油を絞ったあとの大豆)を使い、温醸といって、醤油のモロミを温室にて年中一定の温度にしておき、早ければ3カ月ほどで商品になります。うちでは蔵の中で全く自然の温度のままに置いておくので熟成するのにおよそ3年かかります。


 蔵は創業当時のままですので、柱や天井など、至るところに白く酵母がくっついています。この蔵の中の天然の酵母で醤油を醗酵させています。蔵頭の村西志郎について、私も仕込みや醤油造りを担当しています。醤油のモロミを仕込むのは使い続けてきた杉樽です。今スローフード、ロハスという言葉にのってずっと使っていなかった杉樽を使用しているところもあると聞きますが使い続けないと味には大きな影響をもたらすと考えます。なんせうちの蔵では、蔵全体が呼吸して生きておりますから。蔵頭はよく「モロミは生き物やから、声かけせなあかん」と言います。モロミに櫂を入れてかき混ぜる時などには、昔ながらの唄を歌います。こうすると、醤油がおいしくなると言うのです。
3年寝かせておくモロミですが、気候の変化によって、手入れをしてやる必要があるので、毎日見回るのが大切な日課です。様子を見て、それによって櫂を入れたりします。丸中醤油では、機械的に「作る」のではなく、醤油を「育て」ます。菌が活動しやすい状態を作ってあげるのが私たちの仕事です。本当に子どもを育てるようなものです。
 これだけ時間をかけて造っているので、大量消費時代には消費者にはなかなか理解してもらえませんでした。添加物を使用した醤油が「水より安い」ともてはやされていました。滋賀県の醤油メーカーも、昭和4年には184軒あったのが、平成19年には58軒しか残っていません。うちは広報をほとんどしないできましたが、平成12年に代表取締役に就任した私の代になってやっと広報をするようになりました。ちょうど同じ頃、健康ブームに乗って新聞や雑誌などで紹介され始め、平成13年10月には、読売テレビ「どっちの料理ショー」で取り上げられました。
  うちの醤油の一番おいしい食べ方は、炊きたての白いご飯に少し垂らし、「醤油かけご飯」にしていただくことだと思います。炊き立ての御飯の湯気にのって醤油のとってもいい香りが漂ってくるんですよ。こうやって食べると、添加物で作られた醤油は全然だめなんです。年齢がかなり上のお客様は「あ、これは子どもの頃に食べた味や」とおっしゃってくださいます。戦前の醤油の味と同じだそうです。それとうちの醤油は、この冬場の寒冷の風土によって低温でじっくり熟成しているものですから味の完成度が非常に高いといわれています。ですから水で割っても飲むことができますよ。お湯でわって少し鰹節でも添えたら立派なおすましになります。今産直のお客様が増えています。お客様がお客様を紹介してくださることがとても多いというのもありがたいことですね。
そんな一人一人のお客様を大切にしたいと考え、醤油を1本ずつ確認して手紙を入れて気持ちをお伝えし出荷しています。小さいところですから、全部手作業です。お客様に満足していただけているからこそ、クレームが少ない会社だと自負しています。
 隣の豊郷には、近江商人が寄付した小学校がありますし、私の先々代は、何かにつけ寄付をしていたそうです。経営者として、「世間よし」の社会貢献するのが当たり前の気風があったのでしょうね。私の代では「古式製法」を守った醤油、「口に入るものは安心できるものを」という先々代中居金次郎の方針が「買い手よし」に当たるかもしれません。原料の大豆と小麦は滋賀県内産で、30年以上契約栽培で取り組んできた無農薬で、化学肥料を使わないものです。塩はモンゴル産の天日塩です。安心・安全な商品でお客様に喜んでいただいています。
また、火入れ(加熱処理)をしていても、たまに酵母が生きていることがあるのでペットボトルは使用していません。ガラスビンのみです。
  丸大豆が原料なので、醤油粕も出ます。これは夏季に限りますが魚の養殖業者の方にゆずって廃棄物をリサイクルさせています。がこの程、「丸中醤油の醤油粕を餌にするなんてもったいない」と日本橋の宮内庁御用達の料亭さんからコラボの申し出があり、ちょっと面白い食べ物へリサイクルする動きもあります。われわれでは出来ない事をその道の人がこなす。国内自給率が落ちている中、捨てているものも工夫していくのは大いに取り組みたいことです。
  丸中醤油では、他にはない「塩吊り」という手法を使っています。これは杉樽に水を入れておき、そこに麻袋を吊るし塩を入れ何日もかけて塩水を作るというものです。もうひとつ、モロミを搾る時、醤油業者では使っていない木槽を使うのも独自の方法です。普通は「ふろしき」と呼ばれる道具を使うのですが、丸中醤油はもとが酒造業だったため、あるものを使って搾ったのです。これも他では見られません。できるだけ手をかけて、蔵の菌を守りながら伝統を伝えてゆきたいです。ここの醤油は、電気が停まっても全く関係なく育つんですよ。蔵で機械など何も使っていませんから。小さくても世界でここにしかない醤油を育て続けてゆく、そんな醤油屋でありたいですね。
会社データ

丸中醤油株式会社

代表者/代表取締役社長 中居真和

本社/滋賀県愛知郡愛荘町東出229

   TEL. 0749-37-2719  FAX. 0749-37-4363
   

設立/昭和43年(1968年)2月

事業内容/醤油製造・小売業
http://www.s-marunaka.com/


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