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1983年、琵琶湖を見下ろす小高い山の中腹の農地からの眺望に一目惚れして、新規就農者としてブルーベリーの栽培を開始。耕すことの延長としてフレンチレストランやパン工房、観光農園、グリーンツーリズムなど農業の新しい夢と可能性を追求し続けている。
農業生産法人 有限会社ブルーベリーフィールズ紀伊國屋
代表取締役社長 岩田康子さん 


 35歳で離婚したとき、比良山麓の丘の上の農地から琵琶湖を眺める自然に囲まれた景色に一目惚れし、農業者になろうと決意しました。子どもを一人前に育てるために、私自身が大地に一つの種が落ちて、命が芽生えて、花が咲いて実をいただく事に向き合う以上に伝えられる事はないと思えたのです。「缶詰でなく生のブルーベリーがあれば・・」とのシェフの一言を思い出し、シャベル1本で専門書片手に、ひたすら草を引き土を耕す毎日でした。生産だけでは生活できず、1日1組のフレンチレストランが軌道に乗り始めた矢先、家屋が全焼。「私は朝目覚めたらお母さんが畑で鍬を持って働く姿を見て育ちました。これからは自分のやりたいことのために生きてください」と娘の言葉に背中を押され、レストランを40席に増やしハーブ園、パン工房を増設。3年前には成安造形大学キャンパス内に「カフェテリア結(ゆい)紀伊國屋」を開店。住環境デザイン部建築学科とのコラボレーションで間伐材や藁、土などを再利用したセルフビルド建築に相応しいスローフードレストランをプロデュースしました。今ではスタッフも40名に増え、二人の子どもも片腕として働いてくれています。


 一番人気は8月のブルーベリー摘み体験(一人1000円)です。予約開始の7月1日は電話が鳴りっぱなしで、2日の午前中に1ヶ月分の予約が埋まる程。もともと日本人は農耕民族ですが、社会が発展して分業化が進み、食に手をふれることもなく、見ることもなく、感じることもなく暮らすようになりました。私が初めて農地に立ち、自分の命を支えてくれるものの存在に気づいたときの感動を皆さんも感じて下さるのではないでしょうか。恋人同士や親子でブルーベリーを夢中になって摘み、顔を上げたら眼下に広がる琵琶湖にホッと心が癒されます。ブルーベリーは250gをお持ち帰り頂くのですが、「甘いね、酸っぱいねとか、ジャムを炊いたら美味しいね、煮詰まりすぎたね」等々・・いろんな会話が弾む「豊かさ」をお土産にお渡しできているのでしょう。4年前から始めた安曇川農場では、約4千坪の土地にブルーベリーを約千本と有機野菜やハーブ栽培をしています。そこでは、子ども達が自分で摘んだブルーベリージャム作りに最高の輝く笑顔を見せてくれました。農地を取得してから25年、農薬や除草剤もかけずにやって来たからこそ、本物の豊かさを求めて、毎年真夏の暑い日に大勢の方が汗をかきに来て下さることが、私達農業者の最高の喜びです(1998年JAS認定)。
 14年程前、農業雑誌「家の光」に取材された縁で山崎洋子氏主催の全国の女性農業者が交流する「田舎のヒロインわくわくネットワーク」シンポジウム(IN早稲田大学)に参加。私は「農業が抱える問題は山積みです。規制ばかりの農業を変えていく話し合いの場をつくりたい」と発言しました。当時は農地に家を建てていけない、レストランもいけないと多くの規制が立ち塞がっていました。その後、山崎さん自身が飛んで来て下さり、「耕すだけが農業じゃない。いろいろな農業の形を模索してお互いが認めあえるようなネットワークを作ろう」と共感し合い、今では同会の理事を務めさせていただいています。その出会いから、2003年に日本人初の宇宙飛行士秋山豊寛氏を、2004年に山崎氏を講師にお迎えして「紀伊國屋塾」(年4回)を開催。秋山さんは地球帰還後に「百歳まで生きて地球を見守りたいが、一体自分は何を食べているのか」と考え、農業を始められたそうです。山崎さんは全国各地の農家に泊まって膝を交えた話し合いを実行し元気なお母ちゃん達のカリスマ的存在です。農業や食、地球環境をめぐる話題を通して、地域の人々やスタッフが繋がっていけたらと紀伊國屋塾も今年で5年目を迎えます。
  私は「三方よし」という言葉をずっと知りませんでした。25年前、自分の足元の地球が美しく青くなくなれば、自分の存在すらままならないと心の声を信じて始めたことが、気づいてみると「三方よし」だったのですね(平成18年第1回滋賀CSR大賞ベストプラティス賞受賞)。秋山氏の「この美しい青い地球」という言葉を聞いたとき、目の前のこの土は紛れもなく青い地球の一部、それを耕している自分を知りました。地球だって除草剤や農薬を撒かれたりアスファルトで固められたくないはず。私が関わることでこの小さな土地を美しい地球として次世代に手渡すのが私の使命だと思うようになりました。初めてジャム作りした時から、水を一滴も加えず果実と砂糖だけで、鍋に5kgの材料を入れて炊きあがる本数はたった19本ずつしか作れません。あの香りと色とツヤ、粒のホロリと残る感じ、甘みと酸味が出会う柔らかな味は、同じブルーベリーでも未熟な実や過熟な実、大きい粒や小さい粒等毎回違うので数字通りに割り切れません。今日のはどんな感じかなとくるくると手回しで愛情込めた結果同じ味に仕上がるので、量産は決してできません。1本千円と決して安くない価格ですが、百貨店などの催し等直接販売が縁で、翌夏にはこの園まで摘みに来てくれたりと、一人ひとりのお客様との顔の見える関係を大切にしています。
 高島市の安曇川を舞台に、都市と農村をつなぐグリーンツーリズムに着手(平成16年グリーンツーリズム大賞特別賞受賞)。都会の若者が休日を利用して、地元のおじいちゃんやおばあちゃん達に教えてもらいながら、野菜作りに挑戦しています。心の故郷に根を下ろしたい、地球にアースした生き方を求める人々との繋がりは、農村再生の原動力となるはずです。私の92歳の母は子どもの頃時代背景として貧しかったのですが、母の話を聞くとみんながイキイキと生きているのが伝わるんですね。腸チフスになったときお医者さんも薬もなく、お母さんが芭蕉の葉っぱに寝かし何度も何度も取り替え、それでも下がらない母の熱を井戸端で自分の身体に水をかけて冷たい身体で母を抱いて冷やしてくれたというのです。今、私達は物質的には恵まれた生活をしているのに、心豊かに生きているのでしょうか。豊かさと引き替えに大切な物を失ったのではないでしょうか。今後、三世代・四世代交流を軸に竹藪に入り、火を起こして竈でご飯を炊き、広葉樹を植える「かぐや姫大作戦〜あなたにとって光輝くものは何ですか?」プロジェクトを通して、子どもの心に豊かさを芽生えさせたい。自分たちが苗を植えて育ったら森になる、それこそが光り輝くものであり、子どもたち一人ひとりに大切なものを見つけてほしいと願っています。
会社データ

農業生産法人 有限会社ブルーベリーフィールズ紀伊國屋

代表者/代表取締役社長 岩田康子

本社/滋賀県大津市伊香立上竜華673

   TEL.077-598-2623  FAX.077-598-2633
   

設立/昭和58年(1983年)

事業内容/ブルーベリー栽培と販売、ジャム加工・天然酵母パン製造販売、
観光農園、レストラン・カフェ経営
http://www.bbfkinokuniya.com/


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