売り手よし ・ 買い手よし ・ 世間よし - 近江商人から現代にまで受け継がれる三方よしの理念
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商品の価値を消費者に知って頂くチラシ作りと商品開発で、地域の信頼を得、地産地消を提唱する専門店として、伝統ある近江肉を守ることを使命に、三方よしの理念を貫ぬき続けている。
株式会社千成亭
代表取締役社長 上田弘行さん 

 千成亭の創業は父が昭和30年に甲良町から彦根の橋本町に移り店を構えたことから店名を「上田精肉店」から「千成亭」と改め、新たな出発となりました。「千成亭」の名の由来は、私の父親の名前が上田豊吉という名で、豊臣秀吉の「豊」と「吉」の二つの文字があることから、秀吉の千成り瓢箪の馬印から取ったと聞いています。父親は神戸で修行し、昭和8年にのれん分けを受けて神戸で独立しますが、終戦後疎開のため甲良町へ戻り地元で店を開きます。その20年後に彦根で店を構えたわけです。 今年で丸50年という節目の年になります。彦根の店「千成亭」は、私の兄である会長の上田健吉が父と一緒に始めた店です。私は中学2年生でした。30年代後半になると「千成亭」という名前も認知されてきました。それは定期的にチラシを入れて告知をしてきたという努力があります。チラシは単に安く売る広告というよりも、千成亭という名前を知って頂くためにどうしたらいいのかと思案する中で、商品の価値を消費者に知って頂くチラシ作りにと力を入れました。さらにチラシに紹介する商品としても工夫を考えました。
 彦根藩は徳川家に「養老の秘薬」として近江牛の味噌漬を献上していたという歴史的な背景があります。そうした歴史的な商品ができないかということで現代の牛肉の味噌漬けに取り組んだり、牛肉の文献を読み、それを今風に考案することで最高のビーフジャーキー作りに取り組んできました。こうした自信ある商品を定期的にチラシを入れて、お客さんに広く紹介してきたことで、信頼をいただくようになったと思っています。

店舗を増やしていったのは昭和40年代の後半です。そのきっかけは、卸市場の魚問屋さんでした。魚問屋さんにスーパーで売っているようなトレーに入れてパックした状態の包装肉を売り込みました。魚問屋さんに仕入れに来られる食料品店に売って頂く仕組みです。昔の八百屋さんというのは魚や乾物やなどいろいろ売っていましたから、そうした食料品店が魚問屋さんで包装肉を購入されるわけです。それが40年前後ぐらいまで活発に活動していました。その後、私どもが直接街の食料品店へ回った方がいいのではないかなということで、ある程度一日の販売予測を立てて、地域の八百屋さんを回ったんです。今でいうルートセールスですね。この販売は大きな商圏の中でかなりの売上を伸ばすことができました。
 昭和42年に卸市場が移転したのを契機に、協同組合ができ、私どもは卸市場に出店しました。こうしてお肉の販売では地域に信頼を得られるようになりました。次は信頼ある店舗で近江牛を最高の形でお客さまに味わって頂くためにはどうしたらいいかということを考えました。それが「千成亭」が直接開くレストランという新たな展開になり、現在では販売店が3店舗、レストランが3店舗となっています。
 信頼ということでは、BSEの問題は千成亭としても大きなダメージでした。約1年近く、売上が正常な状態ではなかったです。しかし、常連さん、固定客については千成亭を信頼してくださって、それなりのご支持をいただきながらきちっとした形で運営できたように思います。そういう意味では私どもの誠実な商売のやり方が、信頼にも繋がったんだろうと自負しています。今後は食の信頼を重視する上で、社会的責任としてBSEも含めて安全、安心というということにさらに挑戦していきたいと思っています。そういう意味で、店頭やホームページなどで「だれが」「どこで」「どのように」作ったのかが分かり生産履歴を確認できる国産牛肉トレーサビリティモデル店として積極的に力を入れております。また、特に衛生面については特に力を注いでいるところであり、本年度中にHACCP(ハセップ)仕様の対応可能な施設を建設することを目指しています。
 地産地消ではないですが、生産者が意欲的に生産し、販売者も意欲的に販売する。手をたずさえて一生懸命お客さんに近づくことが大切だと思います。近江牛の伝統を消すことはできませんから。そういう取り組みを続けていきたいと思っています。
 伝統ある近江肉を伝承していくことが私達の指命であり、このことが「三方よし」理念に当たると思っています。まず消費者には誠実でありたいということ。その中で扱っている商品については、いい商品を適正な価格でお客さんに満足してもらうために、常に歴史的な背景を踏まえた上で千成亭はどういう店舗かということをアピールしていくということの中での商品化を考えてきました。彦根に出てくるまではお肉を売るだけの商売でしたが、彦根でオープンしたときは、新しい商品を開発しなければいけないということで、牛肉の味噌漬けやビーフジャーキーを開発しましたが、それに加え干し肉や佃煮、また、ゴボウを芯にしてお肉を巻いてみたり、レンコンを芯に入れて巻いた牛肉の奉書巻きといった新しい商品を開発してきました。
 現状に甘んじず、常に新しい切り口で新しい販売先を考えていくことが大事なわけですが、何よりも商品の開発は売り手の醍醐味でもあり、それは「三方よし」理念につながるのだと思います。 また、スーパーと同じような品揃えでは大手にお客様を取られてしまいます。目の前が生産地ということもあり、専門店としての商品展開をすることで、競争に巻き込まれない店づくり。そうした奥深いことをやっていくのが専門店の使命であり、地域に対する貢献ではないでしょうか。
 私どもはお肉だけの情報ではなく、様々な情報を提供しています。例えば、第10回優良経営食料品小売店等全国コンクールで農林水産大臣賞を受賞を 記念して「人の寿命は113歳」というコンセプトで講演を開催しましたが、今後もこうした講演で、「お肉を食べて元気になろう」ということを消費者 に訴えていきたいと思っています。また、「けやき倶楽部」というのを主催しています。芹川に樹齢400年というけやきの並木があるんですが、このけ やきの並木道を毎月5のつく日に散歩しようと、私どもの会長が率先して一般に呼び掛け、発足して3年になりますが、現在も継続しています。ここか ら芹川を見直して、もっときれいな街にしていこうという盛り上がりになればいいと思っています。こうした地元密着の活動は「買い手よし、世間よし」 に通じるのではないかと思っています。
 また、1994年にオランダ国際食肉製品コンテストで上田勝之(本店長)が金・銀・銅賞を受賞しましたが、 こうして社員の技術を向上させることは、売り手にとってもよい商品づくりにつながり、買い手にとっても喜んでいただけるではないかと思います。 また、そのことをテレビなどマスコミに取り上げて頂くことは食の文化を広める意味で「世間よし」と言えるのではないかと思っています。 私どもは、 食文化を啓蒙しながら伝統ある近江肉を守るということがある意味では社会貢献につながるのではないかと思っています。
会社データ

株式会社 千成亭 (平成17年3月取材)

代表者/代表取締役社長 上田 弘行

本社
/滋賀県彦根市平田町808

  TEL.0749-26-2299(代) FAX.0749-24-3422

事業所/平田店・橋本店・市場店・れすとらん千成亭・せんなり亭伽羅・せんなり亭橙
   

創業/昭和30年(1955年)

事業内容/食肉及び食肉加工品の製造販売・飲食店事業

http://www.sennaritei.co.jp/


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