売り手よし ・ 買い手よし ・ 世間よし - 近江商人から現代にまで受け継がれる三方よしの理念
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近江商人発祥の地の一つに数えられる、近江八幡市。ここで明治時代「まちの和菓子屋さん」として開業し、全国ブランドにまで成長したのが「たねや」である。その成長を支えたのが、「三方よし」の理念だった。
株式会社たねや
代表取締役社長 山本徳次さん

 現在、滋賀県内に直営店など10店舗を、そして首都圏や近畿圏の主要デパートにあわせて24の店舗を展開しています。1990年(平成2年)からは彦根・京橋の出店をきっかけに飲食店事業にも幅を広げ、“たねやのほんとうの姿を見てもらう場”として充実させてきました。1999年(平成11年)には本拠地である滋賀県近江八幡市の重要伝統的建造物群保存地区に、伝統的な町家を再現した「日牟禮の舎(ひむれのや)」をオープンし、お客様に、たねやのお菓子を通して近江の文化を伝えてまいりました。また、1999年(平成11年)からインターネット通販にもいち早く取り組み、3時までなら翌日お届けを売りに、約150種類の商品を日本全国のお客様にお届けしています。
 こうした事業展開の基本にあるのは、季節を届けるという発想です。菓子の始まりは「秋に実り熟す果実」にあります。自然の恵みを喜ぶ気持ちが表現されているんですね。1984年(昭和59年)の日本橋三越店出店の時から、店舗に山野草の鉢を置いて季節感の演出をしてきましたが、さらに四季の花々を愛でながらお菓子を味わえる場を提供しようと、特に近江八幡「日牟禮ヴィレッジ」や守山ではイングリッシュガーデンをそなえ、喫茶の時の雰囲気までも楽しんでいただいています。

 経営理念として「天平道」「黄熟行(あきない)」「商魂」の3つの言葉を掲げています。
 「天平道」とは近江商人から学ぶ商いの道で、“商道は人道である”ということです。近江商人の象徴ともいえるのが行商に用いられた天秤棒ですが、天秤棒をかついで諸国をまわる商いの道は、そのまま人の道、人間性に通じる旅となっていました。そのことをふまえて、ひたすら人間性を磨くことを通じてお菓子をつくりあげ、お客様にお届けするというのが「天平道」です。
 二つ目の「黄熟行(あきない)」ですが、黄熟(あき)はお菓子の源である旬の果実が色づき、熟れることを示しています。商いは、秋に実った果実を交換することに始まったのです。このことから私どもは“手塩にかける”ことを学んでいます。これこそが商いの原点であると考えています。
 三つ目の「商魂」ですが、一般的には、商売を繁盛させようとする心構えを表す言葉として用いられています。しかし私どもは、これを先の二つに魂をこめて日々の商いの中で実行していくことと捉えています。
  1872年(明治5年)に旧八幡町(現滋賀県近江八幡市)の地に「種家末廣」の屋号で創業したたねやが、和菓子のトップメーカーとしてブランドを確立していく間には、いくつかのステップがありました。その第一は、1945年(昭和20年)の敗戦です。世の中は完全な物資不足で、ヤミ取引が主流という時代でしたので、一般の人は和菓子を楽しむという生活の余裕を失っていました。しかし、材料が続く限り、甘いものを作れば必ず売れるという時代でもありました。この時期に作った「栗まん」が安くておいしいと評判になり、飛ぶように売れたんです。この姿勢が、のちのたねやの基本となっていきました。
 そして第二が、1984年(昭和59年)の東京・日本橋三越への出店です。当時のたねやは全国的にはまだほとんど無名の存在でした。まさに困難な局面に飛び込もうというとき、支えになったのが近江商人の経営理念「三方よし」だったんです。近江商人や先人、そして父からの教えを集大成した本『末廣正統苑』を出店直前に出版して、社員に読ませました。この「三方よし」の思いがお客様の心に響いたことが、全国展開の成功の秘訣といえるでしょう。『末廣正統苑』は今でもたねや社員の必携書になっています。まさに私どもの商いの原点なんです。
 永源寺町に開いた「たねや農場永源寺農園」は、安全で安心な素材を自分たちの手で育てたいという思いからスタートしたんです。しかし始めてみると、農園経営には単に「こだわりの素材を追求して、他社との差別化を図る」こと以上に深い意義があることがわかってきました。というのは、今の農業のしくみでは、農作物が消費者の手に渡った時点で、だれが作ったものかが分からなくなってしまう。例えば「私が作った米を食べてもらうんだ」という誇りが消えてしまっているんですね。これでは農家は活気を失うし、結果として日本の将来そのものも非常に危うくなると思うんです。「たねや農場永源寺農園」では、よもぎ栽培に地元の高齢者にお手伝いをしていだたいていますが、農業の活性化だけでなく、高齢者の生きがいづくりの点でも、地域貢献に結びつくものと考えています。
 近江八幡市にシンボル店「日牟禮の舎」をはじめ、「クラブハリエ日牟禮館」、洋菓子研究所、たねや近江文庫などを集めた「日牟禮ヴィレッジ」を開設したのも、地元の活性化に役立ちたいという思いからです。
繁華街から遠く、売上は決して高くない。でもこれは、近江八幡への恩返しの気持ちを込めた店なんです。なぜなら、売上如何よりも、心を満たす空間づくり「わがふるさと」との想いで、全国から人々が集まる場を目指しているからです。そして、ふるさと近江の風土や歴史を紹介することも、私どもの担うべき大きな役割だと考えています。
 近江商人は、商いで得た富を地域社会に還元する「陰徳善事」を旨としていました。今後企業人として取り組んでいきたいのは、まさにこのことです。その一つとして、この秋から愛知川工場内に保育所を開設し、子育て中の人でも安心して働ける環境づくりをすすめていきたいと考えています。
 IT社会となり、情報の合理化が進んでいる今、逆に私どもは、日本人が本来そなえている優れたところが見直されることになるのではないかと考えています。例えば終身雇用制もその一つです。人の能力というのはいつ開花するか分かりません。ですから即断を避け、長いスパンで受け入れるということをしてきたわけで、非常に人間的な企業理念ともいえます。そのルーツを、私どもは地元の先輩である近江商人から学んできました。今求められているのは、人を大切にする経営ではないでしょうか。そのことを、たねやの事業を通して世に示していきたい。それが私の使命だと思っています。
会社データ

たねやグループ (平成16年3月取材)
株式会社たねや 株式会社クラブハリエ 有限会社たねや
株式会社プランニングジャパン 株式会社つぶら 株式会社可美物倶楽部
有限会社たねや農場 企業内認定職業訓練たねや菓子職業訓練校


代表者/代表取締役社長 山本徳次
本部/滋賀県近江八幡市上田町84
   TEL.0748-37-2551(代)FAX.0748-38-0490
創業/明治5年(1872年)
事業内容/和菓子・洋菓子の製造、販売、喫茶・レストラン
http://www.taneya.co.jp/

三方よし理念実践企業紹介
株式会社アオヤマエコシステム
大洋厨房株式会社
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株式会社スポーツショップキムラ
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