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  用語解説 (企業の社会貢献研究所事務局長 稲垣重雄)
社会的責任関係
1
 経営理念
2
 CSR(コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティー)
3
 SRI(ソーシャリー・レスポンシブル・インベスティング、またはインベストメント)
4
 法令順守(コンプライアンス)
5
 情報公開
6
 ステークホルダー
7
 サステイナビリティ(持続可能性)
8
 人権 障害者雇用
 
  1. 経営理念
     企業各社の目指す価値観、つまりその企業はそもそも何のために存在し、何をもっとも大事にし、どのような方向へ進むのかを、企業自身が自らの言葉で示したもの。
    組織において成員の志気を鼓舞するには、共有する価値観を確認することが必要であり、企業においては全社員へ企業理念を浸透させることが、経営者の最も重要な役割だとされる。また、業績が芳しくない時や社員が日常の業務で悩んだりしたときにも、拠りどころになると言われる。
    古くは商家の家訓、会社の社是・社訓がこれにあたる。現在、大企業の代表的なものとして、「綱領」(松下電器産業)、「我が信条」(ジョンソン・エンド・ジョンソン)、「私たちが目指すもの」(富士ゼロックス)などの呼称のものがある。企業倫理や行動規範のベースになるものであり、標語のように簡潔なものから、各種遵守マニュアルまで、「経営理念」をベースとして首尾一貫していることが求められる。


  2. CSR (コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティー)
     企業の社会的責任、または社会に対する責任。従来、企業の果たすべき最も基本的な責任は雇用の創出、有用な財・サービスの提供によって社会的イノベーションを進めることと納税の3つであったのだが、環境保護の必要性が叫ばれたのを契機に、市場経済の論理だけでは解決できない様々な社会的責任が提起されるようになった。また、近年、ヨーロッパで小さな政府を作る必要が唱えられ、社会的課題の解決にあたり、政府に代わって企業への期待が高まった。社会的責任は現在では次のように要約される。
    経営活動そのものに社会的公正性や環境への配慮を組み込み、説明責任を果たしていくこと。
    具体的に人権問題、環境保護、地域貢献など、それぞれの企業が何に取り組むべきかは、その社会や市場との関係によって導き出されるものであり、これをすればよい、あるいはしなければならないといったモデルはない。
    CSRへの取り組みを進めることで、企業にとって、会社の継続的・安定的な成長、社会からの信頼性の確保、競争力の向上、効果的な法令順守手法の提供、地域社会との協調、社会的責任投資からの支持などのメリットが得られるとされる。
    また、取引先のCSRへの取り組みについて調査し、調達先選びに役立てる動きも始まっている(アサヒビールなど)。


  3. SRI (ソーシャリー・レスポンシブル・インベスティング、またはインベストメント)
     社会的責任投資。投資を行なう際、企業の財政面や配当ばかりではなく、その企業の環境保全や社会への対応なども配慮して、投資先を選別する手法。
    そもそもは米国において、アルコールや賭博に関わる企業を避けた倫理的投資があったが、ベトナム戦争時に軍需産業、1980年代に反アパルトヘイト運動による南アフリカ関連企業を除外する投資によって一般に広まった。
    現在では社会的責任の見地による企業調査に基づくファンドが数多く設定されている。米国では1999年にSRIによる運用資産が2兆ドルを超えた。同年に設定されたダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックスでは、アサヒビール、キヤノン、NEC,イトーヨーカ堂など日本企業も37社が選ばれている。日本でも1999年にエコファンド、2000年にはSRI投資信託「あすのはね」が発売された。確定拠出型年金の運用にSRIの利用が計画されている。

  4. 法令順守 (コンプライアンス)
     企業が法令の文言のみならず、その精神まで遵守する「責任ある経営」「誠実な企業」を目指す取り組み。自社の抱える潜在的な法令違反リスクなどを把握し、それを合理的にコントロールすることが持続的成長のためには必要であるという考えに基づく。
    コンプライアンス経営を実現するには、「倫理方針」の策定、方針を具体化した「行動規範」の作成、担当組織の設置、教育訓練の実施、モニタリングによるチェックが必要だとされる。しかし、規定や体制をいくら整えても、経営トップ、担当役員の積極的なコミットメントが不可欠であり、本気の取り組みであることが全社員に伝わらないと実効性は期待できない。また、潜在的なリスクの高い部署の人員だけでなく、全員に教育を施すことが社内でコンプライアンス重視の環境を形成するのに重要だと指摘されている。
    なお、テキサス・インスツルメンツ社の体制が世界的にも模範的だとの評価が高く、同社のホームページでその概要を知ることができる。

  5. 情報公開
     企業の財務諸表の公開、有害物質の排出の届出などが法律等で定められている。法律による規定を超えて、何をどこまで公開するかは各企業の戦略的判断に委ねられている。
    現在、企業が積極的に情報を公開している分野は、自社の環境保護施策をアピールする環境報告と投資家にきめ細かな情報を開示するインベスターズ・リレーション(IR)である。
    また、年金が確定拠出型(401K)に移行するのにともなって、SRIが注目されるのだが、SRIに取り上げてもらうためには、企業自らが、社会的責任を十分に果たしていることを示す情報を提供する必要がある。さらにステークホルダーとの良好な関係の維持、優秀な社員の獲得のためにも、情報公開は重要性を増している。
    情報公開の前提として、社内の情報を十分に収集することと、その情報を一元的に管理する体制を整えることが肝要である。


  6. ステークホルダー
     株主(ストックホルダー)に対置される言葉で企業の利害関係者(企業の決定、ポリシー、活動によって影響を受け、同時にそのプロセスに影響を与える者)を指す。狭義には株主・社員・取引先・債権者、顧客を指す。しかし、人が望む財やサービスを提供するために考え出されたのが企業だったはずなのに、企業の存続自体が目的化し、財やサービスの提供がそのための手段になってしまっているのではないかという反省が、ステークホルダーという考え方の背景にあり、環境、地域社会、各種NGO・NPOもステークホルダーに含まれる。
    社会や環境など企業の存立の基盤を危くしないよう、全てのステークホルダーと良好な関係の構築を目指すステークホルダー・マネジメントも提唱されている。また、社会的責任投資のスクリーニングにおいても、ステークホルダーと、どのようにコミュニケーションを図っているかが指標として採用されている。

  7. サステイナビリティ (持続可能性)
     1992年の地球サミット(環境と開発に関する国連会議)で提唱された考え方。環境を守りながら持続可能性を持って発展する社会経済システムが追求されている。
    企業では、原材料採取・原料製造・部品製造・最終製品生産・流通・使用・廃棄までの製品の全行程を通じて環境負荷の低減をはかるライフサイクル・アセスメント(LCA)が進められている。
    また、1997年に設立された国際的NPO 、GRI(Global Reporting Initiative)は、トリプル・ボトム・ライン(経済的繁栄・環境の質・社会的公正の三側面についてバランスのとれた企業経営が不可欠だとする考え方)に基づいた「持続可能性報告」を提案している。日本にもGRI日本フォーラムがあり、そのホームページからガイドラインをダウンロードできる。このガイドラインにしたがったレポートが日本企業(79社:04年3月現在)からもいくつかの刊行されるようになった。

  8. 人権 障害者雇用
     企業が関わる人権領域として、主に障害者、同和問題、外国人、HIV感染者を考えることが多い。だが、あらゆる権利侵害や差別を無くすという見地に立つと、その裾野は広く、企業活動の全てが関わっている。
    同一労働同一賃金の原則が守られているかどうかを見直した結果、女性の登用を積極的に進めるポジティブ・アクションが採用されたり、非正社員の待遇が改善されたりしていることも人権と関わりがあると考えられる。さらに、不正を通知したものが不利益を蒙らないような措置や、従業員の個人情報や顧客情報の保護が現代的な課題として浮上している。
    法定の障害者雇用率(1.8%)を満たしていないため、毎年多大な納付金が発生していることに対して、株主代表訴訟を起こされたケースがある(日本航空、雇用率を高めるよう努力することで和解)。こうしたリスク面ばかりでなく、障害者雇用に熱心な企業では、健常者がかえって勇気付けられ、職場が明るくなるという副次的な効果があることも報告されている。
    「ねばならない」という義務的な見地からではなく、「公正さ」を社風にすることによって、社内の活力の喚起、企業イメージの向上を目指すことに、企業による人権思想の浸透の意義が認められる。

参考文献:
谷本寛治編著「SRI 社会的責任投資入門(日本経済新聞社)
燬ワ、辻義信、Scott T.Davis、瀬尾隆史、久保田政一共著「企業の社会的責任」(日本規格協会)
斎藤槇著「企業評価の新しいモノサシ」(生産性出版)
燬ワ著「コンプライアンスの知識」(日経文庫)
田中宏司著「コンプライアンス経営」(生産性出版)
宮坂純一著「ステイクホルダー・マネジメント」晃洋書房
 
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